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2009年7月10日 (金)

『ぼてじゃこ物語』のこと~ドラマの記憶と小説版を中心に~・7

 成人した雪子は、強欲な継母の画策で、旧家の惣領息子・牧田との縁談を進められる。式の当日、牧田には愛人も子どももおり、その子を引き取って雪子に育てさせる為に、この縁談が起こったこと、継母も父も承知の上で、自分にだけが知らされていなかったことを初めて知った雪子は、お色直しの隙に披露宴の席から逃げ出す。
 その夜、大阪へ向かう汽車の中で、雪子は一風変わった老婆・千代に出会う。大阪駅で、偽の客引きに騙されそうになった雪子を助けて家に泊めた千代は、雪子の身の上を聞いて、一緒に「自分で働いて食べていく」ことを勧める。
 亡夫と共に、テキ屋から始めて土木建設請負業・堤組を起こした千代は、七十歳を越えた今も、息子たち――堤建設の社長である長男・宗之助と、専務の六男・宗六――の世話にならずに一人で稼ぎ一人で暮らしている、実に頭の良いしっかり者のお婆さんであった。
 千代は雪子を伴い、まず、岐阜の山中で拾って来た菊石を堂島のオフィス街で売る商売から始める。この辺りで記憶にあるのは、雪子がビルの給湯室へお茶を貰いに行っている間に、もう幾つかの菊石を売ったと自慢げに話し、「これがほんまの“お茶の子さいさい”や」と、にんまり笑う場面である。
 次に千代は、早朝の道頓堀で紙屑を拾ってバタ屋に売る。かと思えば、経営者が同じ料理屋とレストランの間に所有する僅か二坪半の土地を、頭を使った駆け引きの結果、五百万円で売って雪子を驚かせる。
 更に千代は、儲けたお金を使って、芦屋で曰く付きの廃屋を買う。蜘蛛の巣だらけで草ぼうぼうの庭先に、昼間から烏が不気味に鳴いているような恐ろしげな屋敷で、一家心中があった縁起の悪さから買い手がつかなかった物件である。
 恐らく、このお話の時のことだろうと思うのだが、記憶にあるのは、即金で買う為の札束を雪子のお腹に巻かせて妊婦に見せかけていた千代が、支払いの段になって、雪子に「ちょっと便所行って、子ぉ産んどいで」――何事かと驚く売り主に対して、事も無げに「いや、金の子、金の子」――と言う場面である。お腹に現金を巻くのは、無論、防犯の為であるが、更に妊婦に見せかけるのは、どんな泥棒も身重の人には手を出さないから……という知恵からである。
 こうして、千代は雪子に、体を使う商売と頭を使う商売の違い、お金の儲け方と使い方――といった大切な事柄を、実践しながら短期間に確実に教え込んで行く。

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