『タイアップの歌謡史』を読んで・後
二つ目は、アニメソングとのタイアップに関する記述の中の「八〇年代にも『みゆき』でH2Oが従来の“アニソン”から離れた主題歌「想い出がいっぱい」を唄ってヒットさせたりする例はあったが、アニメの内容とかけ離れた内容の主題歌が主流になったのは、九〇年代のビーイングのタイアップ以降の現象と思われる」という一文である。TVアニメ『みゆき』の放映開始は1983年だが、私の実感としては、こういう傾向の曲はもっと早い時期から存在していたように思う。特に、劇場アニメに印象深いものが多い。売り上げの数字までは判らないが、最も古い記憶にあるのは「ヤマトより愛をこめて」(1978)と「炎のたからもの」(1979)で、ほか、例えば塩沢さんの出演作品だけを見ても、『機動戦士ガンダム』(1981)の「砂の十字架」、『宇宙戦士バルディオス』(1981)の「素顔のままで」、『戦国魔神ゴーショーグン』(1982)の「涙の法則」、『ザブングルグラフィティ』(1983)の「GET IT!」などがある。デラ・セダカの「星空のエンジェル・クイーン」(1982)、ローズマリー・バトラーの「光の天使」(1983)なども、その類であると思われる。尤も、これらの曲は、作品の主題や世界観や雰囲気をきちんと歌い表わしつつ、一般向けの歌としても十分に通用する――というものなので、「アニメの内容とかけ離れた内容の主題歌」とは、また違った部類に属するのかも知れないのだが。
三つ目は、バーチャル・プロフィールに関する記述の中の「このような流れは、二〇〇三年の映画『黄泉帰り』に主演した柴咲コウがRUI名義で唄った「月のしずく」がミリオンセラーとなったところから始まり(後略)」という一文である。私のなけなしの知識から考えてみると、TVドラマ『ムコ殿』(2001)の桜庭裕一郎の方が早かったと思えるのだが、しかし、何よりその前に、私にはそれ(バーチャル・プロフィール)が最近になって生まれた特別視すべき戦略のようには余り思えて来ない。多分、声優さん方の活躍の場であるアニメ界やイメージアルバム界では「役を背負った歌」が随分と昔からごく当たり前に存在していたからであろうと思われる。考えてみれば、塩沢さんの歌っておられた歌もまた、殆どがそうであった。
結局、この本を読んで得た最大の収穫は、私自身の知識や常識や価値観や感覚の偏りを、またも思い知らされてしまったこと――ということになるだろうか。
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