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2005年3月31日 (木)

再び、明るい話題とは、言えないかも知れないが……・続

 一時期、映画界でもこの手の、多少安易とも思えるリアリズムが「役柄」の上で試みられたことがある。橋本幸治監督が『ゴジラ』のニュースキャスター役に森本毅郎アナウンサーを起用した時は、確かに面白いと思った。NHKニュースで毎日見慣れた顔と声とでレポートされると、ゴジラ出現のニュース場面が何だか妙な現実味を帯びて感じられたからである。しかし、東陽一監督が『ザ・レイプ』の弁護人や検事の役に現役の弁護士を起用した時は、少々首を傾げてしまった。法廷の場面に「本職」が立つのであるから、それまでの劇映画にはなかった種類の迫力が画面に溢れるのは確かなのだが、演技者集団の中に演技ではなく地のままで専門職役を担当している人がいることの違和感、とでも呼べそうな雰囲気の方がむしろ勝っているようで、余り好きになれなかったのを覚えている。
 阿久さんのコラムの中で、些か疑問を呈したい箇所が一つだけあった。旧声優陣が一度も実年齢を意識させなかったことに感動し、「もしも途中で声優の年齢を思いうかべることがあったとしたなら、たぶん、その時点で、絵と声による魔法は解けていた筈である」との一文である。確かに、一般にはそう感じられる向きもあるのかも知れない。けれど、例え声優さんの実年齢や容姿を知っていてもなお、その演じる人物たちの上に演技者本人の顔は決して重ならず、為に作品世界からいきなり現実に引き戻されるような不安もない――というのが、私の実感であるし、それが顔出しの俳優さんと最も異なる、本職の声優さんならではの魅力の一つではないかと考える。
 かつて『となりのトトロ』と『火垂るの墓』が同時上映された時、四歳のメイを演じる坂本千夏さんを「流石だなぁ……」とは感じても、決して「魔法」が解けることはなかったが、同じ四歳の節子を演じる白石綾乃ちゃんには「五歳の子が、よくここまで一生懸命に台詞を言いこなしているなぁ」と、どうしても幼い演技者に感心する現実的な思いの方が強くなり、作品世界に100%のめり込めないもどかしさを覚えてしまったことを思い出す。
 経験豊かな声優陣が年齢差を超えて巧みに演じることよりも、現役の高校生が高校生役を地のままこなすことの方が、より歓迎され持て囃される時代が、もしも本当に来てしまったら……声優界は、随分と魅力の乏しいものに成り下がってしまうような気がする。

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